ルダへ
変わりなく、やっていますか?
ナユです。
今回は、呪術士ギルドの冒険者に会うきっかけになった事柄を、書き記そうと思います。
あなたには、事細かには話していませんでしたが、
私が呪術士ギルドに入ったのは、この冒険者の手引きを代行するためでした。
南部森林の、バスカロンドラザーズに立ち寄ったときのこと。
金色と、銀色のチョコボの羽を、握りしめた召喚士が、なんだか思い悩んだ面持ちでいるところに、私が立ち会ったのがきっかけでした。
見たことのない羽に私が見とれていると、召喚士はひとつ間をおいて、困ったように微笑みました。
「きみは、冒険に興味はない?」
ララフェルの召喚士は、そう聞いてきました。
『冒険』
その言葉に、私は長らく穏やかでいた胸を貫かれるような、
弓か槍か、はたまた雷にでも打たれたかのような、強い眩暈を感じました。
あなたも知る通り、私の本棚には、冒険書がたくさん並んでいます。
だからこそ、それはお伽噺のように、他人事として、常日頃から冒険者との間に、壁があるような気がしていました。
「僕の友人を、導いてくれる人を探しているんだ」
ララフェルの召喚士は、こう言いました。
・砂の都、ウルダハへ行き、呪術士ギルドに属すること
・友人が困っていたら、手を差し伸べること
・冒険を楽しむこと
それを守るのであれば、ギルドへの紹介状と、このチョコボの羽と、僅かばかりの礼金を、きみにあげよう。
そういって、その人はアラグの白金貨を幾ばくか、カウンターの上に置きました。
私には、それは妖魔からの誘惑のように、狂おしく、憧れるものでしたが、疑念はいくつか残りました。
「どうして、あなたが導かないの?」
召喚士は青碧の目を細めました。魔導書は、真新しいとは言いがたい汚れや傷を受け、修理痕のあるハードカバーがとても印象的でした。
「僕には、彼の見る世界が、もう見えないんだ」
その人いわく、旅立ちのあとの純真さや、不便さのなかで感じる喜び、些細なひっかかりやつまづきを、もう忘れてしまったのだと言いました。
だからこそ、その友人と、同じ目線になれる誰かを、求めていたのだと言います。
「彼は、この世界のことをよく知らないんだ。ずっと、自分のコミュニティだけで生きてきたから。
きみは、行商人かなにかだろう。少なくとも、彼よりはこのエオルゼアを知っている。そして、知らないものへの好奇心がある。だからこそ、きみに頼みたいんだ」
そこからは、あなたも知っての通りです。
私は家へと駆け込み、まだ仕事に慣れてきたばかりのあなたに無理を言って、旅支度を始めました。
ザナラーンへ向かう商人の、チョコボキャリッジへ乗せてもらい、ウルダハから旅を始めました。
いま、旅を始めたばかりの私の宝は、金と銀のチョコボの羽だけですが、
いつかたくさんの手土産をもって、家に帰ります。
勝手な姉でごめんなさい。
どうか、具合を悪くしないように。体には気を付けて過ごしてくださいね。
P.S.
ところで、前の手紙で少し触れましたが、召喚士の友人と言うのはエレゼンのことだったので、私は少し、気が遠くなっていました。
ひとまずは、どうにかやっていけそうです。その人のことは、追って別の機会に連絡します。
ナユ
ナユ
エオルゼア冒険記
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